AWSの利用料金が毎月跳ね上がっている――原因の切り分け方と、WordPress運用で押さえるべきコスト削減のポイント

目次
【AIによる要約】
– AWSの料金上昇は「スナップショットの蓄積」「データ転送量」「過剰スペックの放置」の3つに絞って調べれば、原因の9割は見つかります。
– Cost Explorerの「サービス別・日別」画面で増えた項目を特定するのが最初の一手。ブラックボックスのまま請求だけ払い続けるのが最大のリスクです。
– 削除や設定変更は自社でも可能ですが、リサイズは検証環境での動作確認が前提。判断に迷えば外部のプロへの相談が近道です。
はじめに:請求額は「減らないもの」と思っていませんか?
月末の経理処理。先月まで8万円だったAWSの請求が、今月は13万円。
Web担当者の皆さんなら、この「突然の跳ね上がり」に心当たりがあるのではないでしょうか。そして困るのは金額そのものより、「どこが増えたのか分からない」「経営層に説明できない」という状況です。
当社カジヤは、業界歴10年以上・300社以上の企業サイトやWebシステムの支援の中で、AWSを含むクラウド環境の「原因不明のコスト増」に伴走してきた経験があります。同時に当社自身も複数のECサイトやWebサービスを自社運営しており、「自分の請求書」を見る当事者目線でもこの問題と向き合ってきました。
この記事では、WordPressサイトをAWS上で運用している企業を対象に、料金が上がる典型的な原因の切り分け方と、放置した場合のリスク、そして「どこまで自社で直せるか」の判断基準を解説します。
まず見るべき場所:Cost Explorerで「増えたもの」を特定する
原因の推測から入るのは非効率です。AWSにはCost Explorer(コストエクスプローラー)という標準機能があり、請求の内訳をグラフで確認できます。

確認手順は以下の通りです。
- AWSコンソールの「Billing and Cost Management」から Cost Explorer を開く
- グループ化を 「サービス」、粒度を 「月別」 にする
- 先月と今月を比較し、増えている棒グラフを探す
- 増えたサービスを 「日別」 で見て、いつから増えたかを特定する
この「いつから増えたか」が重要です。ある日を境に段々増えているのか、ある日から階段状に跳ねたのかで、原因の当たりが変わります。
- 少しずつ増え続ける → スナップショットやストレージの蓄積が疑わしい
- ある日から急に跳ねる → インスタンスの追加・スペック変更、データ転送の急増が疑わしい
AWS公式も原因分析の出発点としてCost Explorerの活用を案内しています(AWS公式ドキュメント: Cost Explorerとは)。
3大原因その1:EBSスナップショットの「積み上がり」
AWS上でWordPressを運用している環境で、最初に疑うべきはこれです。
EBSスナップショットは、ディスクのバックアップです。便利な機能ですが、取った分だけ課金が続くという性質があります(AWS公式: EBSスナップショットの料金)。

現場でよくあるパターンがこちらです。
- バックアッププラグインやスクリプトが毎日スナップショットを自動作成している
- 削除(世代管理)の設定が入っておらず、1年分以上が溜まっている
- 移行や検証のために取ったスナップショットが、用済みなのに残っている
ディスクが100GBの環境でスナップショットが50世代溜まっていれば、実質5TB分の料金が毎月発生している計算です。1GBあたりの単価は安くても、積み上がれば請求は確実に膨らみます。
しかもこれは「自然増」です。誰も何もしていないのに毎月少しずつ増えるため、最初の数カ月は気づきにくい。結果として、「最近なんとなく請求が高いな」という状態が半年、1年と続きます。
確認と対処
EC2コンソールの「スナップショット」一覧で、作成日と概要を確認してください。命名規則がなければ、どれが現役のバックアップか分からないのが普通です。削除してよいかの判断ができないなら、それは既に管理が破綻しているサインと考えましょう。
3大原因その2:データ転送料金(通信量)
多くの担当者が見落とすのが、この「通信費」です。
AWSでは、インターネットへ送り出すデータ量に応じた課金が発生します。サーバーから受け取る(受信)データはほぼ無料ですが、送り出すデータには段階的な料金がかかります(AWS公式: EC2のデータ転送料金)。
WordPressサイトで転送量が増える典型的な原因は次の3つです。
| 原因 | 起きていること |
|---|---|
| 画像の重さ | 最適化されていない大容量画像が、毎回送信されている |
| CDN未導入 | 画像やCSSを全部サーバー本体が配信している |
| 攻撃・BOT | クローラーや攻撃リクエストが転送量を押し上げている |
特に厄介なのが3つ目です。当社は300社以上の支援の中で、スパムBOTによる大量アクセスが転送料金を押し上げ、請求額が跳ね上がったケースを複数見てきました。見た目のアクセス数はほぼ変わらないのに、裏側でBOTがページを回り続けているパターンです。
この場合、単なる「画像の軽量化」では解決しません。WAFの導入やBOT対策で無駄な通信そのものを止める必要があります。表示速度の改善はSEOの話、転送料金の削減は会計の話。同じ施策が両方に効きますが、目的が違うという点は押さえておいてください。
3大原因その3:過剰スペックの「そのまま運用」
構築時や移行時に、「とりあえず大きめ」で選んだEC2インスタンスを、そのまま数年運用しているケースは非常に多いです。

EC2インスタンスは、スペック(CPU・メモリ)に応じて1時間単位で課金されます。つまり、スペックを下げられれば、月額がそのまま下がります。
判断材料はCloudWatch(CPU使用率やメモリのメトリクス)です。数週間を見て、
- CPU使用率がほぼ常に数%で推移している
- メモリに大幅な余裕がある
なら、ワンランク下のインスタンスタイプへの変更(リサイジング)を検討する価値があります。逆に、使用率が頻繁に上限に張り付く環境での無理なダウンサイドは、サイトの遅延や障害という形で跳ね返ります。当社自身もECサイト運営者として、表示速度と安定性が売上に直結する重みを知っているからこそ、「安くすること」より「過剰の正確な測定」を先にやるべきだと考えています。
放置すると何が起きるか:3つの帰結
料金の話は「経理の話」と軽く流されがちですが、放置すると社内でこうなります。
- 説明責任がWeb担当者に集中する。 予算超過の理由を説明できない場合、どうしても担当者の「管理能力」の問題として扱われがちです。
- 削れない固定費になり続ける。 気づかないまま増えた分は、一度も「減らす判断」を経ていないため、永遠に払い続けます。自社サービス運営の経験から言えば、これはサイトダウンの機会損失と同様に、原因の特定が早いほど、戻せる金額は大きくなる類のものです。
- 根本原因がセキュリティ事故のケースもある。 BOT攻撃や、稀ですが他人から悪用されるリソースの乗っ取りが原因のこともあり、コスト増は異常のシグナルでもあります。
自社でできる範囲と、プロに任せる範囲の境界線
ここまで読んで「じゃあ全部自分で直すべきか」という疑問が出ると思います。当社の判断基準はシンプルです。
自社で対応してよいこと:
- Cost Explorerでの原因特定と、経営層への報告
- 用途が明確な「使っていないリソース」の削除(ただし削除前に名前と日付を記録して残す)
プロへの相談を推奨すること:
- スナップショットやインスタンスの削除・変更が現役サイトに影響しないか分からない場合
- インスタンスのリサイズ(検証環境での動作確認と切り戻し手順が必要)
- 転送量増加の原因が攻撃やBOTの可能性がある場合
削除やスペック変更は一見「設定を変えるだけ」に見えます。しかし本番環境への反映には、バックアップの確保、検証環境での確認、反映後の実機テスト、そして問題発生時の切り戻しまでがセットです。「変えたあと」まで見ているのが、設定変更と保守の違いと考えています。
おわりに:請求書は毎月届く「健康診断書」
AWSの請求額の増減は、サイトの裏側の状態を映す鏡です。跳ね上がったまま放置することは、冒頭の請求額の問題に加え、リソースの老朽化や攻撃への無防備さを黙認することでもあります。
まずは月に一度、Cost Explorerを開いて前月との差分を見る習慣から始めてください。それだけで、原因の早期発見は格段に早くなります。
そして、原因の特定までは自社でもできますが、修正が現役サイトに影響しないかの判断で迷ったときは、無理をしないことをお勧めします。当社カジヤでは、AWS上のWordPressサイトを含むWebサイト保守管理サービスの中で、この種のコスト診断やリソース整理の伴走も行っています。原因不明の請求額にお困りの場合は、まず現状のご相談からお気軽にどうぞ。
関連サービス:Webサイト保守管理サービス