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リニューアルしたのに売上が落ちた――Webサイト・ECリニューアルの失敗要因と事前の防ぎ方

執筆者情報
中村 圭介
株式会社カジヤ/代表取締役 男性向けファッション通販サイト運営の会社を経験し、現職に至る。デザインや開発から、ECやメディアのコンサルティングまでを一貫して行う。お付き合いのあるお客様の事業を成功に導けるように、再現性のある成長支援ができる会社を目指す。

【AIによる要約】
– リニューアル後の売上低下の多くは、URL変更のリダイレクト漏れによるSEO資産の喪失とデータ移行漏れが原因です。
– 発注側は「旧URLの完全リスト」「移行データの範囲」「検証環境での確認」の3点を契約前・見積もりの段階で必ず確認します。
– 公開後はSearch Consoleでインデックス状況を追い、数週間は切り戻せる状態を維持します。

はじめに:リニューアル後に「売上が静かに落ちる」のはなぜか

「デザインが新しくなったのに、問い合わせが減った」
「ECリニューアル直後から売上が前年割れした」

当社は業界歴10年以上で300社以上の企業サイト・Webシステムの支援に携わってきました。その経験で言えるのは、リニューアル後の失敗のほとんどは「デザインの失敗」ではないということです。

実際に起きているのは、旧サイトが10年かけて積み上げた「資産」が、公開の瞬間に静かに失われているという事故です。この記事では、当社が現場で実際に目撃した失敗パターンを「なぜ起きる→何が起きる→どう防ぐ」の因果で整理します。

リニューアルでSEO資産が失われる様子を表すイメージ

失敗パターン1:URL構造の変更でSEOが「リセット」される

なぜ起きるか
デザイン刷新と同時に、URL構造が変更されることがあります。たとえば「/news/2024/045.html」が「/blog/post-045/」になるようなケースです。制作側はデザインとCMSの都合でURLを決めます。そして「URLが変わる」ことの意味を、発注側も制作側も十分に共有しないまま公開日を迎えます。

何が起きるか
旧URLは検索エンジンに登録済みです。旧URLに人を集めていた評価は、新URLに自動では引き継がれません。リダイレクト設定がなければ、検索結果の多くは404エラーへ切り替わります。Googleは明示的に、サイト移転時には古いURLから新しいURLへのリダイレクトが必要としています(出典:Google検索セントラル「サイト移転時にサイトのURLを変更する」)。

当社が見た事例では、リニューアルから数週間のあいだに検索流入が大きく落ち込み、回復までに数か月を要したケースが複数あります。売上の落ち込みは「新しいデザインがウケていない」と誤解されがちですが、原因の多くはこの流入減です。

どう防ぐか
– 公開前に、検索流入のある旧URLの完全なリストを作る(Search Consoleのインデックス状況が元になります)
– 旧URL→新URLの対応表を作り、301リダイレクトとして設定する
– 公開後、Search Consoleで「見つかりませんでした」の急増を監視する

対応表の作成は地道な作業です。しかし、この一枚があるのと無いのとで、公開後の回復速度は大きく変わります。

データ移行で一部のデータが漏れる様子を表すイメージ

失敗パターン2:データ移行の「漏れ」が数週間後に発覚する

なぜ起きるか
移行データの範囲が、口頭や暗黙の了解で決まっていることがあります。「商品データは移します」と言っても、商品画像・在庫・会員情報・過去の受注履歴・メルマガ登録者・お問い合わせ履歴まで含むかは別の話です。公開直後は注文も入るため問題が顔を出しにくく、発覚するのは数週間後というのが現場の実態です。

何が起きるか
当社が見た典型的な例は次の通りです。

  • 過去の受注履歴が移っておらず、返品・問い合わせ対応ができない
  • 会員データの移行漏れで、既存顧客が「ログインできない」と相談してくる
  • 商品の検索ワード(サイト内検索用のキーワード)が消え、探せない商品が出る

ECサイトでは、過去の受注データは単なる記録ではなく、対応の根拠です。これがないと、社内の対応コストが公開翌月から増えます。当事者として当社も複数のECを運営していますが、受注履歴の欠落は毎日の顧客対応に直結するダメージです。

どう防ぐか
– 移行データの範囲を「テーブル単位・項目単位」で書面にする
– 「件数」で検証する(旧環境の商品数・会員数・受注数と、新環境の件数が一致するか)
– 件数一致の確認を、公開日ではなく公開前の検証工程に含める

件数の突合だけでも、移行漏れの大半は公開前に検出できます。この検証を「テスト環境がある業者」と「本番で直接確認するしかない業者」で依頼結果が分かれる点は、テスト環境(検証用サイト)がない本番修正がどれほど危険か、専門家が分かりやすく解説でも解説しています。

失敗パターン3:旧サイトの「意外な資産」が消える

なぜ起きるか
古いサイトには、誰も覚えていない資産が眠っています。月間で多くの流入がある人気記事、問い合わせフォームに直結したランディングページ、印刷物に記載されたPDF案内ページです。デザイン刷新の「コンテンツ一新」の方針で、これらがまとめて削除されることがあります。

何が起きるか
特定ページへのリンクは、名刺・パンフレット・DM・他サイトからの被リンクなど、社外に散らばっています。ページが消えると、外部から来た訪問者は404を見ます。当社が支援した事例では、リニューアル後に「DMに書いたURLが開けない」という問い合わせが数か月続いたケースがありました。印刷物の刷り直しは費用もかかります。

どう防ぐか
– 公開前に、流入・離脱のデータを見て「消してよいページ」と「残すべきページ」を分ける
– 削除するページにも、関連する新ページへのリダイレクトを設定する
– チラシ・名刺・メール署名など、社外に出ているURLを洗い出す

なお、旧環境の契約や管理画面がもう手元にない状態だと、そもそも移行データやURLリストの確保から始めることになります。その進め方は、連絡が途絶えた制作会社のあと、Webサイトを安全に引き継ぐ手順|所有権の確認からサーバー移転までを参照してください。

公開後の監視とインデックス状況確認のイメージ

失敗パターン4:公開後に「誰も見ていない」

なぜ起きるか
リニューアルの成果物は「公開」です。多くの案件では、公開日でプロジェクトが完了し、検証体制が消えます。

何が起きるか
リダイレクト漏れ・フォーム不具合・決済エラーは、公開後の数日から数週間に集中します。この期間に誰も監視していないと、問題の発見が遅れます。発見が遅れるほど、失った流入と注文は戻りにくくなります。

どう防ぐか
– 公開後2〜4週間は、Search Consoleのインデックス・エラー状況を定期的に確認する
– お問い合わせフォーム・注文フローは公開当日に実機で通し確認する
– 切り戻す(旧環境に戻す)判断基準と期限を、公開前に決めておく

「公開後は監視期間である」という前提を発注側から持っているかどうかで、被害の大きさが変わります。

発注側が契約前に確認すべき3点

以上の失敗を防ぐために、発注側のWeb担当者が見積もりの段階で確認すべき点をまとめます。

  1. 旧URLのリダイレクト対応が見積もりに含まれているか(含まれないなら、どこまで自社で準備する必要があるかを確認します)
  2. 移行データの範囲が書面で確定しているか(件数突合の検証工程があるかも合わせて確認します)
  3. 検証環境での確認と、公開後の監視期間があるか(あるいは本番で直接確認する前提か)

この3点が不明瞭なまま進む案件は、残念ながら多くあります。背景には、リニューアルを「デザイン制作」と捉え、旧サイトの資産を引き継ぐ「移行事業」として捉えていない構造があります。移行事業として捉えれば、リダイレクト設計・データ突合・監視は当然の工程として出てきます。

おわりに:防げる失敗を防ぐ

リニューアル後の売上低下は、特別な不運ではありません。URL対応・データ突合・監視という「地味な工程」が省略された結果として、ほぼ決まった形で発生します。

当社は代理店を挟まない直接取引で、社内の専任エンジニアが実務を一貫対応しています。自社でもECサイトを運営しているため、「公開後に売上が落ちる」のがどれほど重いかを当事者として理解しています。リニューアルの計画段階で不安がある場合は、公開前の第三者目線での確認だけでも価値があります。

Webサイト保守管理サービスでは、リニューアル前の移行計画の相談や、公開後の監視も対応しています。まずは現状の課題からお気軽にご相談ください。

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