「納品後の保守は対応していません」と言われた企業の駆け込み先と初動

目次
【AIによる要約】
– 「保守は対応していません」は敵意ではなく得意分野の話であり、職能の違いを理解すれば落ち着いて対処できます。
– 引き継ぎ先探しの前に、契約とアカウントの棚卸し、バックアップ取得、現状把握を済ませてください。
– 商用サイトの駆け込み先は保守を専門とする技術パートナーが第一候補で、返答速度と復旧実績で選びます。
はじめに:「保守は対応していません」のあと、サイトはどうなるのか
「デザインのきれいな会社にホームページを作ったけれど、数年たって更新で困ったことを聞いたら、『納品後の保守は対応していません』と言われた」——当社に届く相談の中で、この状況は定番です。
業界歴10年以上、これまで300社以上の企業サイトやWebシステムの支援に携わってきた経験からも、この一言に直面する企業は決して少なくありません。デザインを得意とする制作会社やフリーランスに納品されたサイトは、更新通知が溜まり、動きが微妙におかしくなり、いざ問い合わせると「保守は対象外」と返ってきます。
まず良いニュースと悪いニュースを伝えます。
- 良いニュース: このトラブルは、順番どおりに進めれば解決できる定型的な問題です。
- 悪いニュース: 「今は動いているから大丈夫」と放置すると、数年単位で取り返しがつかなくなることがあります。
この記事では、①なぜ断られるのか、②探す前に自社でやるべき初動、③駆け込み先の比較、④選び方の基準、の4つを順に解説します。
なぜ制作会社は「保守を断る」のか
誤解してほしくないのですが、この断りの多くは敵意や手抜きではなく、得意分野の違いによるものです。断る会社が悪い会社とは限りません。
「Webサイトの制作」と「Webサイトの保守」は、実は別の仕事だからです。
| 制作の仕事 | 保守の仕事 | |
|---|---|---|
| 目的 | 見た目と導線を設計し、期限までに形にする | 更新・監視・障害対応を、途切れなく続ける |
| 必要な力 | デザイン・コーディング・制作進行 | サーバー・セキュリティ・障害復旧 |
| 必要な道具 | デザインツール、制作環境 | 検証環境、監視体制、緊急連絡体制 |
デザインが得意な会社に、システムの運用まで求めるのは、例えるなら「車のデザインが得意な整備士」に年次点検まで頼むような話です。できる会社もあれば、できない会社もあります。
「更新ボタンを押すだけ」に見える保守の裏側
なぜ多くの制作会社が保守を引き受けないのか。もう一つの理由は、保守が地味に重い作業だからです。月に1回のアップデートに見える作業の中身は、実はこうなっています。
- 変更前にサイト全体のバックアップを取得する
- 検証環境(本番と同じ構成のテストサイト)で更新を実行し、動作を確認する
- 問題なければ本番へ反映し、実機で表示や機能をテストする
- 万一に備え、切り戻し(元に戻す)の手順を用意しておく
この4工程を毎月、複数のサイトに対して漏れなく続けるには、専任のエンジニアと体制が必要です。「その体制がないから断ります」という会社は、誠実な部類に入ります。嘘をついて引き受けて、事故時に雲隠れする会社より、はるかにましです。
ただし、断られたまま放置するのが一番危険
問題なのは、断られたことではありません。何も引き継がないまま、サイトを放置することです。
更新が止まったサイトは、脆弱性(セキュリティの穴)を抱えたまま公開され続けます。IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」では、中小企業こそサイバー攻撃の標的になりやすい現実が繰り返し指摘されています(出典:中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン(IPA))。また、IPAが毎年公表している「情報セキュリティ10大脅威」でも、ランサムウェアや脆弱性対策の遅れに関わる脅威が毎年上位に入っています(出典:情報セキュリティ10大脅威 2026(IPA))。
放置した先で起きることは、現場で何度も見てきました。
- 改ざん: セキュリティの穴から書き換えられ、会社の顔が「怪しいサイト」になる
- 突然の停止: 更新漏れの積み重なりで、ある朝突然エラー画面になる
- 復旧費用の膨張: 更新を先送りした期間が長いほど、依頼時の修正範囲と費用が増える
【初動】駆け込み先を探す前に、自社でやること
断られた直後は、「どこの会社に頼めばいいのか」から考えたくなります。しかし、その順番は逆です。現状が分からないまま探し始めると、見積もりが不正確になり、比較も選定もできません。
まず、2〜3週間でできる次の5ステップを済ませてください。

ステップ1: 契約とアカウントの棚卸し
まず、サイトに関わる「契約とアカウント」を一覧にします。
- サーバー契約の名義(自社名義か、制作会社の「管理代行」か)
- ドメインの登録者名義
- CMS管理画面・FTP・データベースのIDとパスワード
- アクセス解析やフォーム送信先のアカウント
ここで「サーバーやドメインが制作会社名義のまま」と分かるケースが非常に多いです。その場合、名義の移管が最優先課題になります。制作会社と連絡が取れるうちなら手続きは平和に進みますし、すでに連絡が途絶えている場合の対処は、本サイトでも連絡が途絶えた制作会社のあと、Webサイトを安全に引き継ぐ手順として詳しく解説しているので、そちらをご覧ください。
ステップ2: まずバックアップを取る
何を始めるにも、現時点の状態を保存することが最優先です。
- サーバー管理画面の自動バックアップ設定を確認する
- CMS管理画面から、記事や商品データをエクスポートして退避する
- バックアップは2世代以上、別の場所に保存する
「更新を試みて失敗したら元に戻せない」が一番怖い状態です。バックアップがあれば、失敗してもやり直せます。世代管理の考え方については、ホームページのバックアップは何世代必要?データ消失・改ざんから復元するための世代管理と防衛策の記事で詳しく解説しています。
ステップ3: 現状の技術情報を書き出す
次の情報を、分かる範囲で表にします。
- CMSの種類とバージョン
- PHPのバージョン
- 使用中のプラグインやモジュールの一覧
- 管理画面に表示されている警告の有無
「ログイン情報が分からない」と言っても、諦めないでください。外部から分かる範囲の調査は可能で、当社でもサーバーのログイン情報が不明でも諦めない!現状のシステム構造調査で分かること・できることの記事で方法を解説しています。
ステップ4: 納品時の資料とやり取りを集める
契約書、見積書、納品時の資料、打ち合わせのメールを探して一か所にまとめます。見つからなくても慌てなくてよいです。ステップ1〜3の棚卸しと調査で、大部分は代替できます。
ステップ5: 「任せたいこと」を言語化する
業者に伝える内容を、箇条書きで構わないので書き出します。
- 毎月のアップデート(CMS・プラグイン・サーバー環境)
- セキュリティ監視
- 障害が起きたときの連絡と復旧
- 緊急時に連絡がつく時間帯
この5ステップが終わっていれば、どこに見積もりを取っても「正確な金額」が返ってきます。逆にここを飛ばすと、各社が違う前提で見積もりを出すため、比較が成立しなくなります。
駆け込み先は4つ。違いと向き不向き
準備ができたら、駆け込み先を検討します。現実的な選択肢は次の4つです。

| 駆け込み先 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| ①元の制作会社(スポット再相談) | デザイン修正など、範囲が狭い作業 | 継続的な保守契約は引き受けられないことが多い |
| ②レンタルサーバー会社 | サーバー障害、表示速度などインフラ寄りの問題 | CMSの中身(プログラム・プラグイン)までは対応されない |
| ③保守を専門とする技術パートナー | 更新・監視・障害対応まで継続して一任したい | 選定基準を誤ると「安くて対応対象外」になりがち |
| ④フリーランスのエンジニア | 小規模サイトで月額を抑えたい | 休業時の代替がいない。退いたあとの引き継ぎが課題 |
プロの決断基準:売上に関わるサイトなら③が第一候補
ここで、当社の判断基準をはっきり言います。会社の売上やお客様の信頼に関わる商用サイトなら、③「保守を専門とする技術パートナー」を第一候補にしてください。
理由はシンプルで、①②④が「点」の対応なのに対し、③だけが「線」の運用だからです。
- ①は作業のたびに個別の見積もりが必要で、運用の責任をどこも持たない
- ②はサーバーまで。アプリケーション側の脆弱性は残ったまま
- ④は人に縛られる。万一のとき連絡がつく保証がなく、代わりがいない
300社以上の支援実績の中でも、トラブル後に後悔しているお客様の多くが「安さや便利さで決めて、継続運用を見る先がなかった」パターンです。1つの会社が、更新から監視、障害時の復旧まで一貫してサイトを見ている状態を作る。商用サイトには、これが最低ラインだと考えています。
なお、すでに別の保守会社と付き合っていて「乗り換えたい」場合は、別途今の保守会社から乗り換えたい時にサイトを止めない方法|解約・移管を安全に進める手順と事前準備の記事で手順を解説しています。
技術パートナーの選び方:見積もり前に聞くべき5つの質問
駆け込み先が決まったら、次の5点だけは見積もりの前に確認してください。
- 対応範囲はどこまでか —— 「何が対象外なのか」を先に聞く。ここが曖昧な会社は、事故時に「対象外」と言われやすい
- 障害時の連絡と復旧の目安 —— 「平日10時〜18時だけ」の体制なら、営業時間外の停止は自社の損失として残る
- 検証環境と切り戻しの手順の有無 —— 本番サイトでいきなり作業する会社は、事故につながる可能性が高い
- 担当は専任エンジニアか —— 代理店を挟むと連絡が遠くなる。直接エンジニアと話せる会社を選ぶ
- 同じCMS・同じ規模の実績 —— 運用実績に加え、「トラブルを実際に復旧させた経験」があるかを聞く
当社の現場から一言を加えると、「誰がサイトを見ているのか」を最初に確認するだけで、事故時の復旧速度は変わります。当社は代理店を挟まない直接取引で、社内の専任エンジニアが対応しています。この体制の有無は、見積書には書かれないけれど、いざという時に一番効く差です。
月額の価格帯で迷っている場合は、【2026年最新】中小企業のEC・Webサイト保守費用相場|「月額2万円」と「月額20万円」の違いとは?の記事で、「月額2万円」と「月額20万円」の違いの解説をしているので、あわせてご覧ください。
引き継ぎでよくある失敗と落とし穴
最後に、この局面で実際に見てきた失敗パターンを挙げます。
- 管理画面のIDだけ渡して「引き継ぎ完了」と考える —— サーバーやドメインの名義が制作会社のままでは、いざという時にお金も権限も動かせない
- 「今は動いているから急がなくていい」と放置する —— 更新が止まった期間が長いほど、再開時の不具合が重なり、費用が跳ね上がる
- 相談先を決めてから現状を調べる —— 見積もりが不正確になり、比較も選定もできなくなる
- 旧制作会社と衝突してから動く —— 資料とアクセス権の引き継ぎは、円満なうちが一番速い。スポット作業の再相談という選択肢も残しておく
どの失敗も「焦り」と「順番の間違い」が原因です。冒頭の5ステップを済ませていれば、自然と避けられます。
まとめ:断られた瞬間が、Webサイト運用の入口
- 「保守は対応していません」は、運用の責任を自社へ返す合図。悪い会社に当たったとは限らない
- 順番は「現状把握 → バックアップ → 駆け込み先の選定」
- 売上に関わる商用サイトなら、更新・監視・復旧を一貫して見る技術パートナーを軸に選ぶ
当社カジヤも、同じ事業運営者としてサイトが止まる重みを知っているからこそ、300社以上の支援実績を活かして、更新・監視・障害対応までを一貫した体制でWebサイト保守管理を提供しています。「どこに頼めばいいか分からない」段階からでも構いません。まずは現状を一緒に整理するところから始められます。気になった方は、Webサイト保守管理サービスのページをご覧いただくか、お問い合わせフォームからご相談ください。無理な営業はいたしません。システムの裏側を誠実にお見せするのが、私たちのやり方だからです。