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制作会社の「倒産・事業停止」の通知が届いた時に真っ先に確保すべき3つの情報

執筆者情報
中村 圭介
株式会社カジヤ/代表取締役 男性向けファッション通販サイト運営の会社を経験し、現職に至る。デザインや開発から、ECやメディアのコンサルティングまでを一貫して行う。お付き合いのあるお客様の事業を成功に導けるように、再現性のある成長支援ができる会社を目指す。

【AIによる要約】
– 倒産の通知が届いたら、ドメイン・サーバー・ソースコードの3つの情報を、連絡手段が消える前と契約が切れる前に確保します。
– まず通知書面と契約書の保全、WHOISとサーバー有効期限の確認、フルバックアップの取得を数日以内に済ませます。
– 破産後の契約承継は現実的に困難なため、制作会社名義なら新環境への移行を基本に据えるのが安全です。

はじめに:通知が届いた日の現実

「弊社は本日付で事業を停止し、破産手続きの開始決定をいただきました」——制作会社からこのような通知が届いたとき、Web担当者の頭には「サイトはどうなるのか」という不安がよぎります。

そして数日から数週間のうちに、現実はこう動きます。

  • 電話がつながらなくなる
  • 問い合わせメールがエラーで戻ってくる
  • 担当者の個人アドレスや携帯にも連絡が取れなくなる
  • いずれサーバーの契約更新が止まり、サイトごと消える

サイトが消える日時を決めるのは、ドメインとサーバーの契約期限です。つまり、この通知が届いた時点で、権利と情報を確保できる時間はすでにカウントダウンが始まっています。

この記事では、当社がこれまで300社以上の企業サイト・Webシステムの支援で培った経験から、倒産・事業停止の通知を受けた企業が真っ先に確保すべき3つの情報と、初動の進め方を整理します。

なお、すでに連絡が取れなくなって時間が経過したあとの計画的な引き継ぎ手順(所有権の確認からサーバー移転まで)は、別の記事で詳しく解説しています。本記事は「通知が届いた直後の初動」に絞った内容です。

連絡が途絶えた制作会社のあと、Webサイトを安全に引き継ぐ手順|所有権の確認からサーバー移転まで

ドメイン・サーバー・ソースコードの3つの資産を守るイメージ

なぜ「真っ先に」確保しなければならないのか

破産すると、会社の財産は「管財人」の管理下に入る

破産手続開始の決定が出ると、破産した会社の財産は破産管財人の管理下に置かれます。破産法では、破産手続きが始まったあとの財産の管理・処分は管財人が行うものと定められており、会社自身は自らの財産を自由に処分できなくなります(出典:e-Gov 法令検索「破産法」)。

ここが重要なポイントです。倒産した制作会社が「管理していた」ドメイン・サーバー契約・ソースコードは、法律上は制作会社の財産(または管理下にあるもの)として扱われ始めます。つまり、

  • 制作会社自身にも、もう自由に契約を更新したり引き継いだりする権限がない
  • 対応するのは管財人(または代理人の弁護士)で、進め方は手続きベースになる
  • 料金の支払いが止まれば、サーバー会社・ドメイン会社は契約を解除する

残された時間は「契約期限」だけ

サーバーやドメインの契約は、支払いが止まっても即日停止するとは限りません。しかし、更新日が近い場合、猶予は数週間程度のこともあります。そして一度失効すると、

  • ドメイン:失効後は他者に取得されるリスクがあり、元に戻せない
  • サーバー:契約解除後にデータが消去されると、復元はほぼ不可能
  • メール:サイトと同じサーバーで運用していた場合、メールも止まる

サイトを失うこと自体も大きな打撃ですが、受注データ・顧客データ・記事コンテンツといったデータそのものを失うことのほうが、事業への打撃は大きくなります。だからこそ、通知が届いた直後の行動がすべてを分けます。

真っ先に確保すべき3つの情報

情報1:ドメインの「管理情報」(名義・管理会社・有効期限)

最初に確認するのは、自社ドメインが誰の名義で、どこで管理され、いつ期限を迎えるかです。

確認方法はシンプルです。.jpドメインであればJPRSのWHOIS検索で、それ以外のドメインでもWHOIS検索サービスで登録者情報を調べられます(出典:JPRS WHOIS検索)。

確認項目 見る場所 確認すべきこと
登録者名義 WHOIS検索 自社名か、制作会社(またはその代理店)名義か
管理レジストラ 契約書・請求書 お名前.com、さくら等のどこで管理されているか
有効期限 WHOIS検索・管理画面 あと何ヶ月で更新日を迎えるか
管理画面の所在 社内の記録 自社でログインできるか、制作会社の管理か

ここで自社名義・管理画面も自社にありであれば、ドメインは失われません。期限が来る前に自社で更新し、必要に応じて管理会社への支払い方法を自社のものに変えます。

一方、制作会社名義・制作会社の管理画面で運用されていた場合は、このドメインは制作会社の財産の一部として管財人の管理下に入ります。期限内に管財人経由での移管交渉か、新ドメインへの切り替え準備を進めることになります。移管交渉は時間がかかるため、期限が迫っているなら新ドメインへの切り替え準備を並行して始めるべきです。

情報2:サーバー契約の「実態」(契約者・有効期限・バックアップの所在)

次に、レンタルサーバーの契約実態を確認します。ポイントは3つです。

  1. 契約者が誰か:契約書・請求書・サーバー会社からのメールを探します。自社名義ならサーバー会社への直接の窓口として交渉できます。制作会社名義なら、契約の継続は管財人を通すことになります
  2. 有効期限と支払い状況:あといつまで契約が生きているか。更新日が近いほど、残された時間は短くなります
  3. バックアップの取得:管理画面にログインできるなら、直ちにファイル一式とデータベースのエクスポートを取得し、自社の環境(社内PC・クラウドストレージ等)に保存します

バックアップについては、この点を強調しておきます。サーバーが停止・解除されたあとのデータ復旧は、基本的にできません。また、取得できたとしても管財人との交渉が必要になり、時間と費用がかかります。ログイン情報が手元にある今のうちに取得するのが、最も確実で最も安い方法です。

落とし穴として多いのがメールの存在です。info@自社ドメイン のようなメールアドレスがWebサイトと同じサーバーで動いているケースは頻出します。サーバーが止まるとメールも止まり、ビジネスの連絡網そのものが失われます。メールの移行先を含めて初動で確認してください。

情報3:ソースコードと素材の「権利関係」(著作権帰属・納品物・ライセンス)

3つ目は、少し性質の違う「権利」の確認です。Webサイトのデザインやプログラムの著作権は、請負契約では契約書の定めによるのが原則です。契約書に「著作権は発注者に譲渡する」旨がなければ、制作会社側に留まる可能性があります(出典:経済産業省 情報実務用語集)。

倒産時には、この権利関係が直接「引き継げるか」に関わります。

  • 契約書・見積書・発注メールの保全:著作権の帰属を示す記録は、管財人への請求や、新しい制作会社への依頼時の根拠になります。通知書面と合わせて、必ず保全してください
  • 納品物の所在確認:デザインデータ(ai / psd)、ソースコード、写真・素材データが自社の手元にあるか。サーバー内にしかない場合は、バックアップ取得時にまとめて確保します
  • ライセンスの名義確認:有料テーマ、有料プラグイン、フォント、画像素材のライセンスが誰の名義か。制作会社名義のサブスクリプションは更新が止まるため、自社で買い直すか代替品に切り替える判断が必要です

権利関係の整理は、新しい制作会社に引き継ぎを依頼するときの費用にも直結します。「権利が自社にある」と証明できる資料が揃っているほど、スムーズで安価に移行できます。

倒産通知を受けてから数日以内にやること:初動チェックリスト

ここまでを踏まえ、当社が推奨する初動のチェックリストを示します。目安として、通知を受け取ってから数日以内に済ませることを推奨します。

  • 通知書面・契約書・見積書・請求書・担当者とのメールを保全したか
  • ドメインのWHOIS登録者名と有効期限を確認したか
  • ドメインの管理画面が自社にあるか、社内で確認・共有したか
  • サーバーの契約者名義と有効期限を確認したか
  • サーバーの管理画面にログインでき、フルバックアップ(ファイル+データベース)を取得したか
  • バックアップを自社の環境に保存したか(サーバー内だけに置かない)
  • @自社ドメイン のメールがどこで動いているか確認したか
  • 通知に記載の連絡先(管財人・代理人弁護士)を確認したか
  • 対応の記録(いつ・誰が・何をしたか)を残しているか

やってはいけないこと

焦りのあまり、次の行動に踏み込むと話が複雑になります。

  1. 管理画面の総当たり・権利のないアクセス回復:制作会社名義のサーバーや管理画面に、契約者でもないのにログインを試みる行為は、不正アクセスとして禁止されています(出典:総務省「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」)。自社の権利を主張する場面ほど、手段の正当性が問われます
  2. 管財人の管理下にあるものの無断処理:破産管財人の管理下に入った財産に勝手に手を付けることを、のちの交渉で不利に解釈される可能性があります
  3. サーバー契約の自己判断での解約:ログインできたからといって契約を解約すると、データも履歴も失われます。解約は移行完了後の最終段階で行います

初動は「確保する」ことだけに集中し、判断が分かれる事項は専門家(弁護士・保守パートナー)と進めるのが安全です。

プロの決断基準:承継か、移行か

最後に、当社の判断基準を明確にします。

破産した制作会社名義の契約・権利を「そのまま承継する」ことは、現実的には困難だと考えてください。管財人の管理下にある財産との契約関係の整理には時間がかかり、ドメインやサーバーの更新期限は待ってくれません。そのため当社では、通知を受けた時点で次の基準で進めることを推奨しています。

  • ドメイン・サーバーが自社名義で、管理画面も自社にある → 契約は自社で継続。サイトの保守・移行先だけを新たに確保する
  • 制作会社名義・管理画面も向こうにある → 新環境への移行を基本に据える。データはバックアップから引き継ぎ、ドメインは期限までに移管交渉か新ドメインへ切り替える

「なんとかして元の契約を引き継げないか」と模索する時間で、新環境の準備を進めるほうが、サイトを止めない確率は大きく高くなります。実際、当社が過去に対応した倒産・連絡途絶の案件でも、初期対応の速さがそのまま復旧までの期間とコストに反映されていました。

データは守り、契約は作り直す。これが倒産という事態に対する、最も事故の少ない進め方です。

まとめ:通知が届いたら「確保」だけに集中する

  • 真っ先に確保するのは ①ドメインの管理情報、②サーバー契約の実態、③ソースコードと素材の権利関係 の3つ
  • 破産手続きが始まると財産は管財人の管理下に入り、契約の更新・承継は制作会社自身にもできない
  • ログインできる今のうちにフルバックアップを取得し、自社の環境に保存する
  • 契約や権利が制作会社名義なら、承継ではなく「新環境への移行」を基本に据える

倒産・事業停止は、再開の見込みが立たないまま時間だけが過ぎていく事態です。「いつか連絡がつくかもしれない」を期待するより、確保できるものを今日確保する。その判断の速さが、ドメイン・データ・ビジネスの継続性を守ります。

権利関係の整理、データの保全、新環境への移行までを一貫して任せたい場合は、当社のWebサイト保守管理サービスでご相談を受け付けています。まずは現状の整理からお手伝いします。

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